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〈もし獣読書〉強運の持ち主

〈もし獣〉=〈もしも獣医師がこの本の読書感想文を書くとすれば〉です!
今日はこの小説をちょっと違った視点から紹介したいと思います。


強運の持ち主 (文春文庫)

強運の持ち主 (文春文庫)

まずはタイトルがビジネス書っぽいのに表紙のイラストが可愛いなっていうギャップから思わず手に取りました。

ざっくりあらすじを紹介すると、元営業職の主人公がその話術を活かして占い師に転身、いろんな人の相談に乗りながら自身も成長していく、そんな話です。
主人公のトークスキルが気になる、短編集なので読みやすそう、ほっこり人情話っぽい、と思い購入に至りました。

ところが。
この本、獣医師的視点から見ると超現実的。
読後にはほっこりどころか胃は痛むは動悸はするはで大変な事になりました(笑)

この主人公、ちゃんと占いの修行してます。
複数の占い方法による結果+営業で培った観察力&話術からその人の背中を押すようなアドバイスをするんですね。

これがそのまま「相談内容」=「主訴」、「占い結果」=「検査結果」、「アドバイス」=「治療方針」と考えるとあら不思議。一気に診療っぽくなりました( ; ゜Д゜)

動物病院のお医者さんって仕事がちょっと特殊だなって思うところは、検査にしろ治療にしろ最終的な決定権は飼い主さんの手に委ねられているということです。
動物の状態を診て必要な検査や治療をすることももちろん大事ですが、飼い主さんがどんな人で何を望んでいるかを把握する方が重要だったりします。

そしてトークスキル
いくら腕が良かろうと、知識が豊富であろうと話が下手なら必要な検査すらさせてもらえない時もあります。
また、同じような検査結果が出たとしても、号泣される方もいればあからさまに面倒臭そうな態度を取られる方もいます。
あるときは楽観的な予後を、またあるときは最悪のシナリオを説明しながら、その動物にとってベストな治療ができるよう誘導することも獣医師の腕の見せどころだったりします。

しかし、人には様々な事情がありますから、一筋縄ではいかないこともしばしば。

本の話に戻すと、この主人公、相談者の背景を深く知ろうとして奮闘したり、占いよりも自分の体験談を話してみたり、占い結果に振り回されすぎて逆に相手のことが見えなくなったり、意外にわたわたしてます(笑)

これが本当によーくわかるんです(笑)
きちんと勉強して出した結果と、自分の直感と、相手の背景と。これらを絶妙なバランスで取り入れた上で話をしないと、大切な患者さんが守れません。内心わたわたしてるときも多々ありますが、それはプライベートブログ内だけでの秘密です(笑)

まさかこんな可愛らしい短編集からこんな事を考えさせられるとは思ってもみませんでした!
これだから読書はやめられませんね(*´∀`)

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